皆さま、牡丹雨に煙る京都よりご機嫌うるわしゅうございます。今年の新入生のかんです。
今年の桜は儚さも一入、四月の初めに田中宮市営住宅へ引っ越して参りました折には、既に八重桜の花弁が絨毯のごとく散り敷いておりました。
白居易が「夜雨」に詠んだ〈隔窓知夜雨 芭蕉先有聲〉の如く、ここの雨音は特に趣深く、中国江南の故郷を思い起こさせます。窓から外へ眺める度に南国の梅雨期を思い出します。異国にいながら故郷の湿潤を感じる不思議――洗濯物の生乾きさえ懐かしい郷愁に変わるこの頃です。
皆さまも国語の授業で習ったであろう白楽天のこの句、実は日本の『枕草子』に引用されるほど古くから愛されてきたのですね。
先日、藤森神社の駈馬行事に参加させていただきました。馬術の「藤下がり」を見た瞬間、ふと頭をかすめたのは白居易の〈乱花漸く人を迷わすに欲し 浅草纔かに馬蹄を没すべし〉という詩句。平安貴族も愛でたというこの情景が、千年の時を超えて現代に継承されていることに、文化の架け橋たる京都の底力を感じずにはいられません。
最近、雨上がりのスーパー帰り、たまに水溜りに浮かぶ花の残骸を見つけました。中国の「流水落花」の趣とはまた違う、京都の「雨塵花」の美しさ。
新たな季節の扉を、この目で確かめていく楽しみがまた一つ増えました。
それは、留学の醍醐味だと思っています。