冬になると、田中宮にはイルミネーションが出現します。
それは丁度、101号室の目の前の、「クロガネモチ」の木に現れて、チカチカと光ります。クロガネモチの木のことはよく知らないけれど、イルミネーションがよく似合います。赤青橙白の小さな灯りが幹に枝に取り付いて、クロガネモチの木はきらびやかに飾り立てられます。冬の夜の田中宮の主役です。
クロガネモチの木は、駐輪場からもよく見えます。夜、学校から帰ってきて駐輪場へと漕ぐのに、出迎えのような大層な光です。
クロガネモチの木は私が住んでいる二階からもよく見えます。帰り道、廊下を歩いて玄関までの道のり、とがったてっぺんがよく光っています。
昔話じゃあありませんから、イルミネーションだって妖精さんが準備してくれたわけじゃありません。こうして寒い日に帰ってくる人を出迎えてほっこりするだろうと思って、こどもたちが喜ぶだろうとおもって、自治会や公社の大人が準備しているのです。私、吉田を含む3Lの学生もちょっとばかし手伝いました。
夢物語のように一夜にして素敵なイルミネーションが現れるのもロマンチックですが、自分達で準備したそれも中々いいものです。