チリコンカンという料理をご存じでしょうか。
無理に日本語にするならば「米国風とまと豆煮」的なやつです。それにしてもこの間抜けな音はどうしたことでしょうか。チリコンカン、あんぽんたんとかトンチンカンに近いものを感じます。コンカンというのも擬音のようでどうにも中身が詰まっていない音がします。Wikipediaによりますと、スペイン語で「肉入り唐辛子」を意味する料理名らしいです。
ところでこの頃は暑さもさることながら、他にも困ったことがいくつか。私吉田的には、中でもアロスが手に入らないことにはほとほと困り果てています。正に生活必需品であってこれが為に我々の文明が始まったと言っても過言ではない、日々の活力の源。つまりは米です。スペイン語でアロス。
さてアロス不足に悩むこの頃、ひとまず大麦を導入してみました。調理方法も普段と変わらず、食べ方もそんなに変わりないので代用としてはまずまずといったところ。ローマ人は家畜の餌だとかなんとか言って見たりとか何かと小麦に比べて貶められることの多い大麦ですが、こと炊く場合には小麦に対する優位性は疑いようもないでしょう。しかしながら、大麦、もちもちしすぎていて中々完全に米を代替するものとはなり得ません。毎日はきつい。もちもちすぎる。あれだけ毎日食べられる米には、定めしなんらかの魔力が宿っているのでしょう。
つまるところ、チリコンカンです。
先般の情勢を鑑みるに、我々には新たなる穀物の開発が急務であるのです。今や固形の大麦に半ば愛想を尽かした我々は、次なる穀物に豆を選んだのであります。
豆料理と言えばチリコンカンです。それはもう新大陸においてトマトが発見された時から、あるいは少なくとも西部開拓が始まった時からの決まりです。
つくり方は簡単。みじん切りのタマネギとにんじんを炒めて、挽肉入れて、豆入れて、トマトを缶詰から流し込み、ヘラか何かで混ぜつつ煮込むだけ。鍋一つ煮込めば何日か分の主食を確保出来ます。
チリコンカンといえば西部劇です。逆光で現れたイーストウッドがバッタリ扉を押し開けて、渋い顔でカウンターに詰め寄りオヤジに鍋ごとよこせとのたまう。そこで出てくるのが丁度このチリコンカンなのです。店の誰しもが彼を訝しげに見る中、無言でむさぼるチリコンカン。
そんなわけでもちろん私はモリコーネを聞きながら、口笛に上機嫌で豆を煮るのです。
まあしかし調味料には揃えられないものがいくつかあって、たこ焼ソースとか香味ペーストとかで代用しました。トルティーヤも付け合わせてませんし、一緒に飲んだのはワインじゃ無くて大麦の液体をでしたし。模造もよいところ。
アロス・ウェスタンといったところでしょうか。
ともかくオリジナルの米が恋しい日々です。