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3L APARTMENT

3L APARTMENTで暮らす学生のブログ

2024.7.8
散髪の日

暑い日々が始まりました。恐るべき夏の到来です。

 

さて、ついこの間、私吉田にしては珍しく被写体として扱われることがありました。

被写体となるということは、そのコンテンツを構成する要素となることです。コンテンツに合わせた風体で、姿勢で、話し方で、それを崩してはいけません。

ところで、私は髪を放置しがちです。3Lの面々からも短髪の時の方が評判も多少マシで、多分それを維持するのが正しいのでしょうけれども、どうしても放置しがちです。この頃もなんやかんやと言いつつ散髪屋と縁遠い生活を送っていました。そうすると即ち髪の毛が伸びます。伸びると私の髪は先端がくるっと巻き始めます。手を尽くしてもこのひねくれた髪の毛はどうしても、まっすぐ素直になってくれません。聞かん坊です。

つまりなにが言いたいのかというと、髪の毛を、被写体前に切らねばならんかったのです。どうにかしてすっきりさわやか若者大学生っぽさをかさ増ししなければいけなかったのです。バンカラ大学院生だというのに。

その散髪しないとというのをすっかり忘れていて、あっと思い出したのは直前も直前。当日の朝。丁度正午に集合でしたから非常に緊急で髪を切らざるを得ない状況に、完全に自らの業によって追い込まれました。

唯でさえ緊張する中で、焦りつつ「散髪屋」と検索窓に入力して地図で見ればピンがちらほらと。一つずつスクロールして見ていけば、チェーンのやつとか地元っぽいやつとか、おしゃれ極まるやつとか。さてさて、一体どこに行けば一番迅速に私の髪の毛をましな様子に整えてくれるんだろうか。何をおいても早さ、速さ、迅速さこそが重要です。

近くて、尚かつ短い時間で切ってくれそうな店。例えば1000円カット的な所、だいたい呆れるばかりに並んでいます。おしゃれ極まるところは言うまでも無く、懇切丁寧にじっくりやってくれるでしょうからこれもダメです。ついでにこれから大いに社会性を使わねばならんのに、店員さんとのコミュニケーションですり減らすことは許されません。

つまり狙い目は、すぐさま切り始めてくれて、チェーンの画一的サービスより融通が利きそうな地元っぽい理髪店でありました。それも自宅と撮影場所の経路上が望ましい。

 

そのようにして自ずと絞られたその店を目指して、リュックを背負って。外は灼熱暑い夏。急ぎチャリを漕ぎ漕ぎ向かいます。

ようやく到着したら、間の悪いことに丁度一人のお客さんが俯せに洗面台に沈められてシャンプーされているところ。床に毛の一つも落ちていないのでまだ切り始めてもいないように思われました。さてさてと悩んでいる時間もそう残されていません。すぐさま諦めて仕方なくチェーンのところにまた急ぎチャリを漕ぎ漕ぎ。やはり外は灼熱。

果たして、予想通りと言うべきか果てしなく続く散髪待ちの人々がガラス越しに伺えました。またしてもこれはすぐさま切り始めてくれるどころか、下手すると1時間待つことになりかねません。やはり悩んでいる時間もそう残されていません。さらにまた諦めて仕方なく次の候補の理髪店にまた急ぎチャリを漕ぎ漕ぎ。どうしても外は灼熱。

やっと到着して、ガラスを覗くと椅子に座る人は無く。どころかガラス越しに店員のおばあさんと目が合ってしまったので、運命を感じたわけでは無くむしろ気まずさを感じつつ、そしてそれを大きく上回る焦りと共に、ドアを引いて、ようやく初めて店内にまでたどり着いたのです。

 

とんでもない客ですが、用事があってどうしても髪を切らねばならないことと、でも時間が無いので30分で切れるかということを注文します。

30分、30分かぁ」と言いつつ、ちょっとの間、おばあさんは時計と私を見比べて逡巡しました。ここもダメならいよいよくるっと巻き始めた髪の毛で被写体しに行かねばならんだろうなと胸算用。

「やってみましょう」と答えたおばあさんの姿は、それ故に、さながら名医が命を救うオペに臨むが如く。あるいはどこかの技術者が無茶な設計要求に応えようと挑むが如く。救いの女神か地獄に仏か。

「今日は外暑いですね。」と、つまりお前汗だくやなと京都弁で言われつつ、シャンプーして髪切って整えて。

素晴らしき哉、25分にて全て終えて送り出してくれました。

あと飴ちゃんまでくれました。2つも。

 

3Lでの暮らしもあと半年ほどですが、こういう素敵な心意気に溢れるこの街を離れるのは惜しいものです。

 

 

 

この記事を書いた人
吉田瑞希YOSHIDA
兵庫県出身です。読書が趣味で本屋や古本屋によく行きます。まちを見て回るのが好きで、ひたすら歩き回っていることも多いです。最近はスケッチの練習を始めましたが上手くはないです。
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