季節の変わり目というのは、大抵はっきりしないものです。いつの間にかうぐいすが鳴き始めたり、蝉の声が途絶えたり、ふと吐いた息が白かったり。気が付いたときには一つの季節がもうすでに去ってしまっているというのは風流でもありますが寂しくもあります。ああ、あれは春だったねなどとしみじみと思うばかりの吉田です。
ただし、夏というのははっきりと、鳴り物入りで登場するものです。寝苦しい夜というのは私にとって夏の兆しの最たるものです。今年は昨日がそうでした。私は今年から田中宮に越してきましたから、京都の夏を真に感じるのは初めてということになります。先輩入居生から、京都の夏は暑いから気をつけないといけない、電気代なんてたいしたことないのだからエアコンを使えとアドバイスをもらいつつ、しかしとは言え同じ日本の同じ関西なのだからそこまでのものでもあるまいと高を括っていた部分もあったのですが、早々にエアコンを使用しました。
もう一つ夏を感じることと言えば、蝉が鳴き始めたことです。7月に入ると処処どころではなく無数に集まった蝉が大きな大きな鳴き声を響かせますが、夏の初めはそうでもありません。先日なにやら音がして耳鳴りかしらと思っていると、いやこれは蝉ではないかと、はたと気づきました。おそらくたった一匹がやっと鳴き始めたころかと思います。このくらいなら可愛いものです。蝉は番いを見つけるために鳴くそうですが、それを思うとたった一匹鳴く彼はなんだか不憫でさえあります。夏も盛りになるにつれそんなことも言ってられなくなるでしょうが。
夏が到来して、汗をかきながら過ごす日々に、早くも夏が速やかに去ることを願い始めています。しかし夏と言えば地蔵盆やふれあいまつり等、イベントが目白押しです。そう思えば案外楽しくないことばかりでもない夏ですから、いつのまにか秋になってしまうまで、田中宮の夏を味わい尽くしたいと思います。